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抵当権と賃借権、どっちが優先される? 2012/06/30

抵当権と賃借権、どっちが優先される?

[相談]

 当社が営業所として賃借して使用している建物について、貸主の経済状態が悪化したため抵当権が実行されると聞きました。当社はこの建物から退去しなければならないのでしょうか。

[回答]
 
1.賃借権と抵当権の関係
 あなたの会社が当該建物から退去しなければならないのか、或いはそのまま借り続けられるのかは、賃借権と抵当権のどちらが優先するのかという問題です。そして、賃借権と抵当権の優先劣後は、抵当権設定登記と賃借権登記又は賃貸建物引渡しの前後関係で決まります(一般的には、賃借権の登記をすることは稀なので、引渡の時点が重要になります)。

2.賃借権が優先する場合
 あなたの会社が、当該建物に抵当権が設定される前から当該建物を賃借して使用しているのであれば、抵当権が実行されても賃貸借関係は継続され、そのまま借り続けられることになります。抵当権に基づく競売によって当該建物を買い受けた者は、あなたの会社へ賃貸されている建物を購入したことになり、新たな貸主になるわけです。

3.抵当権が優先する場合
(1)賃貸借の終了
 逆に、あなたの会社が、抵当権設定登記後に当該建物を借り受けたのであれば、抵当権が優先するため賃借権を対抗することができず、建物から退去しなければならなくなります。

(2)明渡の猶予
 ただし、これでは賃借人が予期せぬ明け渡しに応じなければならず、転居先もきまらないまま立退きを余儀なくされることになり、賃借人にとっては非常に酷な結果になることもあります。そこで、民法395条1項で、競売手続の開始前から使用収益している賃借人に対しては、買受人の買受けの時から6カ月は、賃借物の明け渡しを猶予すると定められています(平成15年改正。なお、従前の「短期賃貸借制度」(民法295条)は、競売妨害に利用されるケースが多く、問題があるとして平成15年改正により廃止されました。)。

4.まとめ
 このように、抵当権が設定されている物件を賃借した場合には、将来不測の明け渡しを求められる可能性があることから、賃貸借契約の締結時には、当該物件の権利関係をしっかりと確認するとともに、抵当権が設定されている物件を賃借する場合は貸主の信用性を慎重に検討する必要があるといえます。

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