6月22日に成立した平成23年度税制改正について、6月30日付の官報で詳細部分が明らかとなりました。 このうち今回は、主にマイカー通勤者に影響が出る通勤手当の限度額改正について、お届けしたいと思います。
1.先ずは現状の取扱いから
事業者が、従業員に通勤手当を支給している場合には、その通勤手当のうち一定の金額まで所得税や住民税がかかりません。このように税金がかからないことを、非課税といいます。 非課税と一言でいっても、この場合の非課税となる金額は、通勤距離や通勤のために利用するもの(電車を利用する、マイカーを利用するなど)に応じて異なります。たとえば、マイカー通勤者は、下表のとおり通勤距離に応じて非課税の金額が設けられています。
【通勤距離に応じた非課税金額】 ┏━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━┓ ┃ 通勤距離(片道) ┃非課税金額(1ヶ月あたり) ┃ ┣━━━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━━━━━┫ ┃@ 2km以上 10km未満 ┃ 4,100円 ┃ ┣━━━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━━━━━┫ ┃A 10km以上 15km未満┃ 6,500円 ┃ ┣━━━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━━━━━┫ ┃B 15km以上 25km未満┃ 11,300円 ┃ ┣━━━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━━━━━┫ ┃C 25km以上 35km未満┃ 16,100円 ┃ ┣━━━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━━━━━┫ ┃D 35km以上 45km未満┃ 20,900円 ┃ ┣━━━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━━━━━┫ ┃E 45km以上 ┃ 24,500円 ┃ ┗━━━━━━━━━━━┻━━━━━━━━━━━━━┛
ただし、上表B〜Eの非課税金額は、それぞれの金額よりも仮に公共交通機関を利用した場合の運賃相当額が高ければ、10万円を上限にその運賃相当額が非課税金額となります。
┌ 例 ──────────────────────────────────┐ │ 従業員Aさんは、会社へマイカー通勤しています。自宅から会社までの距離は │ │片道34kmです。Aさんは通勤手当として毎月20,000円の支給を受けています。 │ │この場合の、通勤手当に係る非課税金額について、考えてみましょう。 │ │(イ) 通勤距離に応じた非課税金額 │ │ 片道25km以上 35km未満 … 16,100円 │ │(ロ) 公共交通機関を利用した場合の非課税金額 │ │ 合理的な通勤経路による1ヶ月当たりの定期乗車券の額 … 24,610円 │ └────────────────────────────────────┘ 上記の場合、(イ)<(ロ)のため、(ロ)の24,610円が非課税金額です。Aさんの通勤手当は20,000円ですから、Aさんの通勤手当は、全額税金がかかりません。
2.改正は、いわゆるマイカー通勤者が対象です
ところが、今回の改正により、上記ただし書き部分が削除されました。つまり、【通勤距離に応じた非課税金額】しか適用できません。上記の例でいえば、(ロ)は使えなくなり、(イ)の16,100円が非課税金額となります。そのため、改正後Aさんは通勤手当20,000円と(イ)との差額3,900円について税金がかかります。
今回の改正は、いわゆるマイカー通勤者が対象です。ガソリン代が高騰しているこの時代にあって、非常に厳しい改正項目です。 この改正の適用開始は、平成24年1月1日以後支給分になります。マイカー通勤者を雇用されている事業主にあっては、改正後の影響を確認しましょう。
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