内縁の妻又は夫の相続権
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私には、30年以上生活を共にしている夫がいますが、籍は入れておりませ ん。もし仮に夫が亡くなった場合、私にも夫の財産の相続権があるのでしょう か。 ----------------------------------------------------------------------
[回答]
<結論>
内縁関係にある配偶者は、民法第890条に定める「配偶者」に当たらず、 相続権はないとするのが、通説、判例です。従って、残念ながら夫の財産につ いて相続権はありません。
<解説>
民法は、相続が開始した場合に誰が相続人に該当するかを定めています。第 一順位の相続人を子、第二順位の相続人を直系尊属、第三順位の相続人を兄弟 姉妹としており、配偶者は常に同順位の相続人になるとしています(民法第 887条〜第890条)。
また、民法は法律上の配偶者と認められる形式的要件として、「婚姻は、戸 籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。」とし ています。したがって、法律上の夫婦となんら変わりのない生活を送っていた としても、婚姻届が出されていない場合(このような事実上の夫婦を「内縁」 と呼ぶ)は、法律上は「配偶者」と認められず、相続人には当たりません。
もし、夫の財産につき相続することを望む場合は、婚姻届を提出するか、夫 に遺言書を作成してもらい、財産の遺贈を受けられるようにしておきましょう。
なお、法律上の規定によって、他に相続人がいない場合に限り、居住用の借 家権の承継(借地借家法第36条)や、特別縁故者として財産を承継できる場 合(民法第958条の3)があります。また、死亡退職金や年金の受領につい ても、内縁関係にある者に取得が認められるケースがあります。
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